ポエトリー・ドッグス
「よくわからないけど、ことばによって、じぶんが、はっきりする。でも、それは、けっきょくじぶんではないものができるというのと、いっしょな気がするんだ」
心の中に自分がいる。そして、身体としての自分が在る。だけれどもこの世界のどこにも自分がいない。そんな馬鹿みたいな考えが頭をよぎることがある。一陣の風のように。本棚を見てそう思うことが増えたかもしれない。
続きを読むマクベス
「テレンス」息せき切って訊ねた。「今日は何日だ?」
「どうだっていいじゃないか。『あすが来、あすが去り、そしてまたあすが、こうして一日一日と小きざみに、時の階を滑り落ちていく……いつも、きのうという日が、愚か者の塵にまみれて死ぬ道筋を照らしてきたのだ』愚か者!」
(犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎/コニー・ウィリス)
続きを読む
犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎
犬が苦手だった。苦手になったきっかけ、というものは思い出せず、物心ついた時からずっと犬のことが苦手だった。これは犬種によらない。ゴールデンレトリバーのような大型犬はもちろんのこと、チワワのような小型犬も駄目だった。散歩している犬とすれ違うときは毎回ものすごく緊張するし、何ならすれ違わなくていいように道を変えることすらした。とにかく、僕は何故か犬という存在に怯えてしまうのだった。
続きを読むボートの三人男 もちろん犬も
続きを読む「僕らに必要なのは休養だよ」とハリスが言った。
「休養を取って、気分を一新することだな」とジョージ。「脳に対する過剰な負担のせいで、全身が沈滞状態に陥っているんだよ。環境を変えて、ものごとを思い悩む必要から解放されれば、精神の平衡が取り戻せるはずだ」