雪国

2020という数字はキリがよくて、未来的だなと思っていたのだが、そこに1を足して2021となると、なんだか得体の知れないやつという感じがする。得体の知れない年になってもう一週間が過ぎたが、今のところ心身ともに安定していて、いい感じだなと思っている。…

闘争領域の拡大

「小さい頃は神様がいて/不思議に夢をかなえてくれた」というのはユーミンの歌詞だが、僕にもかつて、神様と呼んで差し支えないような存在がいて、僕がすべきことをそっと教えてくれたものだった。なんでもないような瞬間に、人生の指針とも言える考えがパッ…

つるつるの壺

最近、昼間に特に大したことをしているわけでもないのに、家に帰ってご飯を食べてシャワーを浴びるともう、ぐでんぐでんに疲れ切って何にもやる気が起こらなくなってしまう。あの本読まなきゃなとか、あのアルバム聴いときたいなとか、そういえばアマプラに…

破局

一年ほど前に、高校の友人と火鍋を食べに行った。火鍋というのは中国の鍋料理で、薬味(?)がゴロゴロと入ったスープにラム肉を通して食べる、いわばしゃぶしゃぶのような料理だ。僕は二回生の頃に初めて食べて、すっかりハマってしまい、ことあるごとに友人を…

『吾輩は猫である』殺人事件

こんな夢を見た。 腕組をして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかな瓜実顔をその中に横たえている。真白な頬の底に温かい血の色がほどよく指して、唇の色は無論赤い。とうてい死にそう…

吾輩は猫である

伸びた髪の毛が視界を遮って邪魔くさいので切ることにした。しかしいつも行っている店は臨時休業しているらしい。個人経営なので店主が体調を崩してしまうとどうしようもない。仕方なく新しい店を探すことにした。こういう時に生来の優柔不断が発揮されるの…

お嬢さん放浪記

炎天下の街を歩いていると、マスクの中で玉のような汗がすぐさま噴き出てくるのがわかる。実に耐え難い。開かれた空間だし、半径2メートル圏内に人はいないし、別にちょっとぐらいいいだろうとマスクをずらす。マスク越しでは感じられなかった、夏の匂いがす…

山月記・李陵

ひどい天気が続いている。研究室にいくだけでびしょ濡れになり、乾く頃にはもう帰る時間で、またびしょ濡れになりながらとぼとぼ歩く。家に着いて、テレビをつけると氾濫した河川の映像が流れていて、何県のどこそこでは何人亡くなったというテロップが常に…

藤富保男詩集

「でたらめなんて、かんたんだよ」 きみは、いった。 「じゃあ、しゃべってみて」 「きゅうにいわれても」 きみは、くちを、とがらした。「ちゃんと考えたらできるけど」 「ほら」 ぼくは、いった。「でたらめって、ちゃんと考えなきゃできないんだ」

他人の顔

高校生の頃、僕はいわゆる理数科コースに所属していた。そのコースには男女合わせて80人ほどでクラスは2つしかない。だから三年間同じクラスで高校生活を共にした子が何人かいた。その何人かの中で、少し変わった女の子がいた。

ゴドーを待ちながら

自宅待機の要請が大学から出た。七畳半の部屋で一日の大半を過ごしている。時間は膨大にあるように思えるが、その時間を活かし切る余裕が今の僕にはない。でもせっかくなんだから、と思って無理やり本を開く。この時期は何を読んでも今の現実に重ね合わせて…

告白

生まれも育ちも和歌山で、大学生になってその地を離れたが新しい家も京都で、関西から外で暮らしたことがないのである。だから普段はバリバリの関西弁かというと全然そんなことはない。関西弁と標準語が入り混じったような気色の悪い言葉が口から出る。たま…

インド夜想曲

情勢は悪くなる一方だが、新年度を迎えたために研究室にはいかねばならず、暗澹たる思いでデスクについた。けれども同期や先輩、または今日から配属された四回生たちと喋っていると日々の憂鬱が紛れて心はかなり軽くなった。これからはこのバランスをうまく…

ホテル・アルカディア

こんな時なので、個人的に嬉しかった話を一つ。石川宗生の新作が出た。

一一一一一

困ったことに金が無い。日に日に削れていく貯金残高を見て、胃がキリキリと痛んでいく。平日は夕方まで研究室に籠っているので土日にバイトをいれるほかないのだが、サークルの大きなイベントとか遊びの用事が入るのも基本的に土日なので、ほぼ働けていない…

シンドローム

いつもはしょうもない近況報告をしてから本の感想に移っているのだけれども、それをする気すら起こらないほど、佐藤哲也の『シンドローム』は面白かった。

ひきこもらない

何がそうさせているのかは分からないが、心に余裕がない。知り合いの、または街で見かけた赤の他人の、些細な言動・行動に苛立ちを覚える。体の内側を火であぶられたような苛立ちが、頭の中にある”考えるスペース"をキュッと狭めている。人に対して負の感情…

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

2020年に入ってからずっと体調が悪い。自分の体調を意識すればするほど悪化していくような気もする。病は気から、とは言うがその気を起こさせるのも病なので終わりが無い。今日は研究室に辿り着くなり、意識が飛びそうになるほどの腹痛に襲われてやむを得ず…

コンビニ人間

芥川賞・直木賞が発表された。今村夏子の『むらさきのスカートの女』が話題になっていたのはもう半年前のことなのかという驚きがある。芥川賞が発表されるたびに今回は新刊で買って読んでみようかな、と思うのだが毎回お金の無さを言い訳にしてパスしてしま…

百年の孤独

2010年代最後の大みそかに僕は38度を超える熱を出し、駆け込んだ休日急患でインフルエンザと診断された。その後熱は39度を超え、意識は朦朧とし、気づいたら2020年に突入していて、そのまま三が日をすべて布団の中で消費した。ようやく落ち着きを取り戻した…

うたかたの日々

物語の基本的な構造はグラフに表すことができる、と述べたのはSF作家のカートヴォネガットである。彼は縦軸を幸福度(上に行くほど幸福、下に行くほど不幸)とし、時間の流れを横軸に取り、物語の起伏をグラフに表そうと考えた。講演の際、彼は3つの形を例とし…

12/14

急に何もかもどうでもよくなる。12月はそういう気分になりやすい。明日はサークルで組んでいるバンドのライブがあるけれど、それをほっぽりだして、川か、海か、とにかく巨大な水の流れがあるところのそばで、飲めないビールを飲みたい。多分、そんなことを…

地獄の季節

気が付くと、前に記事を書いたのが50日も前になっている。この50日の間に僕は、少ない数の詩集を買い、少ない数の詩集を読んだ。最近、詩を焦点に当てているのか、それとも詩を読むこと自体を焦点に当てているのか、分からない日々を過ごしているように感じ…

ビットとデシベル

本を買う・読むにあたって、自分の中でのブームというのが存在している。一回生のころはミステリーを中心に読んでいて、二回生ごろにはSFに片足突っ込み、三回生では村上春樹が影響を受けた作品群を読み漁っていた。四回生になった今は何がブームかというと…

カキフライが無いなら来なかった

大学院に入るための試験が終わった。長くて辛い日々を過ごしてきたが、なんとかなったような、なってないような、そんな曖昧な気持ちで短い夏休みを迎えることになった。最近特に思うのだけれど、最後の試験が終わって夏休みに入るときの解放感というのが年…

世界音痴

最近、また入眠障害に悩まされている。昨日はいざ眠らん、とベッドにもぐりこんだのが23時で、そこから3時まで一向に眠れる気配がなく、動かないタイムラインや少し攻めた内容の深夜番組を眺めてはどうして僕がこんな目に合わなければいけないのだろうと考え…

カラマーゾフの兄弟

4月から研究室生活が始まった。朝の九時から夕方まで狭い実験室に閉じこもっている。夏には院試もあるし、この調子ではしばらく本は読めそうにないなと思っていた。そんな時に、ゴールデンウィークには研究室が無いことが発覚した。てっきり10連休の間も数日…

ジャップ・ン・ロール・ヒーロー

「僕は文章についての多くをデレク・ハートフィールドに学んだ。」と村上春樹は彼の処女作『風の歌を聴け』で語っている。

笙野頼子三冠小説集

ちょうど一か月前になるが、引っ越しをした。だいぶ新しい街に慣れてきたところだが、まだ中身を取り出していない段ボールがいくつかある。小説が詰まった段ボールも昨日ほどいたばかりだ。

浴室

こんにちは。 引っ越しというのは人の心を惑わせるものだ。来週には新しい部屋に住んでいるということをぼんやり考えていると、ラーメン屋のお冷を倒してしまって、我に返った。そんなぼんやりした頭ながらも、もう少しこの街を探検しておくかと思い、これま…