盤上の夜

 

 

 こんにちは。三週間ぶりですね。

 

 大学の授業や実験の合間を縫って宮内悠介の『盤上の夜』を読みました。創元SF文庫。吉川英治文学新人賞

 

 

 しかしまぁ、あれですね。大学忙しいです。毎日一限があるし、火水木は午後実験で埋まっているし。今も書かなきゃいけないレポートから目を逸らしてこれ書いてます。そんなわけで本を読む時間が途切れ途切れになってしまう。『盤上の夜』は短編集だから大丈夫かなと思ったのですが駄目でしたね、どうしても本に入り込むことができずに文を追うだけになってしまう。悲しいものです。

 

 『盤上の夜』は盤上、卓上遊戯をテーマにした短編が六つ収録されています。帯の触れ込みに「対局の果てに、人知を超えたものが現出する」と書かれている通り、遊戯を通して人間の真理やら神の領域やらそういった類のものに迫っています。

 

 

 …どうも書きづらいですね。この記事。もう率直に言いますけどそんなに面白くなかったんですよね。盤上遊戯をガジェットにするっていうのは面白いところなんですが、タッチに軽さが無いというか、なんというか。真面目過ぎるというか。そんな話を真剣に語られても…となってしまったんですよね。これは恐らく上記したように僕の読書姿勢にも問題があるとは思いますが。

 

 ただ短編集としては完成度は高いと思います。一つ目は表題作でつかみはばっちりですし、二作目の『人間の王』もチェッカーというマイナージャンルがテーマでありながらそのマイナーさを良く生かしています。僕はこの『人間の王』が一番好きですね。インタビュー形式の作品で徐々にインタビューされているものが何なのか明らかになっていくスタイル。好きです。三作目の『清められた卓』は外しにきてるな、という感じ。描写はやっぱり真面目ですが、ちょっとコミカル。一番印象に残りやすい作品だと思います。四作目『象を飛ばした王子』は古代インドが舞台の話。これ盤上遊戯を絡めて書くのは無理があるのでは…と思ってしまいました。五作目『千年の虚空』は前四作の流れを崩すような暴力的ともいえる描写が印象的な作品でした。肉体関係をもった異母姉弟というぶっ飛んだ設定でしたが綺麗に話が畳まれていました。ただこれも綺麗に行き過ぎていてちょっと笑ってしまいましたね。最後の『原爆の局』は一作目と登場人物が同じでなおかつ脇役として三作目のキャラも出てきて、いかにも締めですという感じ。物語の終盤に表れるイメージの羅列は素晴らしかったですね。前五作品の言葉を巻き上げる嵐のような描写。六編を一気に読んでいたならここでの感動もさらに深いものになっていたんだろうなと思うと残念です。

 

 

 この本を通して分かったのは、本を読むには時間を取った方がいいこと、そして僕は理路整然とした話ではなく法螺話が好きだということです。

 

 それでは、レポートを書きます。