ぼくは勉強ができない

 こんにちは。早朝の散歩がとても心地よい季節になってきましたね。

 

 山田詠美の『ぼくは勉強ができない』を読みました。文春文庫です。

 

 

 この小説は1996年に新潮文庫で出版され、2015年に文春文庫で出版されています。新潮文庫より文春文庫の方が文字が大きいし、表紙もスタイリッシュです。何より文春文庫の方には『蹴りたい背中』の綿矢りさによる解説がついているので、今回はこちらを購入しました。

 

 

 いつだったかは忘れましたがサークルの友人が山田詠美の『ひざまずいて足をお舐め』を活動日に持ってきていたことがあり、それを数ページ読ませてもらったのですが、村上龍に似た強烈な文体とストーリーで衝撃を受けたことを覚えています。その日から山田詠美の作品が気になってはいたのですが作品数が多く、どれから読み始めたものかと考えあぐねいていました。そんな中、前回記事にもした江國香織の『号泣する準備はできていた』を完全にタイトルで選んだので、それならば山田詠美もタイトルで選んでしまおうということになり、この『ぼくは勉強ができない』を手に取ることになりました。これを書くにあたって調べて初めて知ったのですがこの二人同世代なんですね(山田詠美は1985年に『ベッドタイムアイズ』でデビュー、江國香織も1985年に童話作家として活動をスタート)文章から感じられる年代感が全然違うので勝手に別世代の作家だと思っていました。まぁ『ぼくは勉強ができない』が1993年で『号泣する準備はできていた』が2004年なので当たり前と言えば当たり前なのですが…。

 

 さてさて、内容ですが、時田秀美という何故か女性にモテてしまう男子高校生が主人公のお話です。秀美の周りには若い感性を持つ祖父、自由奔放な母、幼馴染の不良少女、良き理解者である顧問兼担任の先生など、いかにも、というようなキャラクターが揃っています。中でも重要な役割を果たしているのが主人公の彼女でもある桃子さん。バーで働いているのでもちろん年上です。このバーに主人公は入り浸っている訳で、同級生と訪れてお酒を飲んだり、更には担任の先生とも訪れたりもしているのでこの世界の風紀はどうなっているんだ⁉とツッコミをいれたくなりますが、まぁその辺は小説なのでつっこむのは野暮ですね。それとも僕の高校生活が真面目過ぎただけで他のみんなは年上と付き合ったりお酒を飲んだりしていたのでしょうか。

 

  八作の連作短編からなるこの物語は勉強より大切なものは何かと言うテーマが語られます。だからといって社会や学校を批判するだけではありません。そりゃ勉強も大事だけれど人生はそれだけじゃないよね、と言う感じでしょうか。『ぼくは勉強ができない』名言十一選!みたいな記事もあるくらいには台詞回しが巧妙です。悪く言えばちょっぴり説教くさいというか芝居じみている。小説に対して何言ってんだって感じですけどね。それがいいと思う人もいれば鼻につくと感じる人もいるだろうなという感想です。

 

 

 なんか書いてて違和感が半端じゃなくなってきたので素直に書きます。

 

 

 

 自慢がしたいわけじゃないです。僕はかつて勉強ができる方でした。多分。それなりに名の知れた大学に入れたし。小さいころから引っ込み思案な性格だった僕は本を読むのが好きで、小学校二年生の時には六年生向けの棚の本に手を伸ばしていました。そのせいなのかは分かりませんが勉強は特に苦ではなく、中学に上がってもそこそこの点は取れていました。点を取ると、先生が褒めてくれるし親も喜ぶので、それがうれしくて勉強を続けました。そのまま高校に進学し、勉強は格段に難しくなったものの努力を続け、今の大学に死に物狂いで入りました。

 

 しかし大学に入ってから三年目、僕は勉強ができなくなりました。講義は何を言っているのか分からないし教科書も無駄に分厚く訳の分からない記号と文章ばかり。そもそも大学自体が怖い。半年前ぐらいまでは嫌悪感でしたが最近それが恐怖感に変りつつあります。教室にいるやつらは研究室がどこがいいかなんて話をしているし、教授たちもそろそろ院試に向けて勉強した方がいいよなんて言っているし。僕が勉強の原動力としていた褒めてくれる先生と喜んでくれる親がいない。僕は何のために勉強しなきゃいけないんですか。

 

 

 今更勉強よりも大切なものがあるかもねみたいなことを言われてもここまで来てしまったのだからどうしようもないんですよ。そりゃ色恋沙汰が無かったわけではありませんが、今となっては色あせた過去でして。それでもその日々が夢の中でフラッシュバックすることも多々あるわけで。目が覚めて悲しい気分になりながら時計を見るともう一限は始まっているわけで。遅れていくのが嫌で、というかもう大学に行くのが嫌で、こんなくだらない文章を書いていたら二限も終わりそうな時間になっていて、三限はもともと行ってないから今日は大学に行かずに済むな、なんて。僕は何のために勉強してきたんですか。

 

 

 はは、支離滅裂