その女アレックス

 こんちは。

 

 な~~~にが国内外のミステリ賞総なめじゃ、ということでピエール・ルメトール『その女アレックス』です。

 

 

 

 

 この本買ったのは確か僕が一回生で初めて下鴨納涼古本まつりに行った時で、二年近くも積んでたことになる。当時他にもトルストイやらスタンダールやらも買ったのだけれどそれらは「もう読まないであろう段ボール」の中に収まってしまっている。『その女アレックス』もその好奇心の墓場に埋まっていたのだけれど、僕の完全な気まぐれによって掘り起こして読むことになった。

 

 この小説、少しミステリに詳しい人なら聞いたことがある小説だと思う。五年くらい前に国内外のミステリ賞七つを獲得したとして猛プッシュされていたのだ。その七つが何の賞かは書くのが面倒くさいので気になる人は自分で調べてほしい。でも結構聞いたことある賞ばかりだ。で、何故当時読まなかったかというとミーハー的で嫌だったから、という理由ではなく、ただ単純にお金がなかったからだ。本って高いよなぁとしみじみ思う。

 

 

 はい。

 

 いろいろと語るのが面倒くさいのでアマゾンからコピペします。

 

 

 英国推理作家協会賞を受賞した大逆転サスペンス。貴方の予想はすべて裏切られる!
おまえが死ぬのを見たい――男はそう言って女を監禁した。檻に幽閉され、衰弱した女は死を目前に脱出を図るが……。ここまでは序章にすぎない。孤独な女の壮絶な秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進する。「この作品を読み終えた人々は、プロットについて語る際に他の作品以上に慎重になる。それはネタバレを恐れてというよりも、自分が何かこれまでとは違う読書体験をしたと感じ、その体験の機会を他の読者から奪ってはならないと思うからのようだ」(「訳者あとがき」より)

 

 

 だってさ。そうですか。僕はそう思いませんでした。

 

 

 まず問題として挙げられるのはこれが「カミーユ警部三部作」の二作目ということ。まぁ二作目といえどもここまで話題なのだから一作目読まなくても大丈夫かな、と思っていたが大間違い。もろに一作目の設定が出てくる(ある程度の説明はあるけども)。特にひどいのがカミーユ警部の元妻であるイレーヌ。一作目の「悲しみのイレーヌ」で殺されたらしく、カミーユがそれを二作目でも引きずっている。それはもう本当にめちゃくちゃに引きずっている。物語後半のクライマックス直前でイレーヌの殺害現場を訪れたりする。今回の事件と何も関係ないのに。これはさすがに読みながら「なんやねんお前」と言ってしまった。

 

 はい、次の問題がカミーユの設定。身長が非常に低い(140cmぐらい)がとても気が強く、部下は彼の一挙一動に気を配っているという設定。なんやねんそれ。ストーリーはかなりシリアスなのに、この小人ともいえる身長の描写がたびたび挟まれて妙にコミカルになってしまっている。かと思えばカミーユ自身は性格がきつい。そのせいでなかなかストーリーに入り込めなかった。

 

 そして問題のプロット。上にコピペした訳者あとがきでは大逆転って文字が二回も出てきているけども全然大逆転という感じはなかった。たったの一ページや一行でガラッとちゃぶ台をひっくり返してしまうのがミステリにおける大逆転だと僕は思うのだけれど、この小説ではとってもゆっくりゆっくりとちゃぶ台を裏返されているような気分だった。あぁ、ちゃぶ台ひっくり返すんですね、という感じ。しかもそれが二回も行われる。え?またひっくり返すんですか?という感じ。普通二回もちゃぶ台をゆっくり裏返してる人がいたらこの人何がしたいんだろうって思うよね。

 

 

 叩いてるだけなのもアレなのでよかった点を少し。

 

 監禁の描写はよかった。衰弱の様子がリアルで監禁されたらこうなってしまうんだろうなと思わせるものがあった。監禁するだけで何もしてこない男の気持ち悪さも真に迫っていてよい。

 

 あとラストシーン。事件の真相ではなく正義を優先するというのが探偵ものではなく刑事ものらしくてよかったね。

 

 

 それぐらいですね。本当に少なかった。

 

 

 読み終えてから違う意味で愕然としてツイッターやグーグルで感想を読み漁ったけどほとんどの人が称賛しててびっくりした。みんな正気か?正気じゃないのは僕なのか?これはもはや一周回ってオススメです。