はじめまして現代川柳

 結局、結局なんだよな。今自分が一人で暮らしている場所と、家族がいる実家では時の流れ方が違うのだし、長い長い電車の時間も活字を見るのに適してないんだよな。いや、適さなくなったのは時間の方ではなく、僕の方で、少しの距離の移動で心と体がずれるようになってしまったのだった。

 

こわれそうです本日晴天/佐藤みさ子

ねえ、夢で、醤油借りたの俺ですか?/柳本々々

美しい鍵だ使えば戻れない/竹井紫乙

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グミ・チョコレート・パイン

 隣のクラスにものすごい美人がいるぞ、ということを聞いたのは僕が高校一年生の頃だった。入学したての慌ただしさも薄れて、みんなが落ち着きを持ち、部活動などで周りの人間との関係性が構築され始めた5月の頃のことだったと思う。僕自身、興味はあったのだが、わざわざその子の顔を見にいくためだけに、知り合いもいない隣のクラスに乗り込むのは気が引けたので、「ふぅん」と言って、気に留めていない体を装っていた。僕が所属していた数理化学科は2クラスしかなかったので、2年か3年の時に同じクラスになるだろうとぼんやり思っていた。

 

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人として軸がブレている

 日々の激しい流れの中をもがくように生きていると、4月も終わりを迎えようとしていて、街はすっかり新緑といった様相。2月には街の骨のように見えていた木々にも、ワサワサと葉が生い茂っている。道路沿いにはコデマリとサツキの花が咲き乱れていて、桜の時期とはまた異なる春の心地よさを感じさせてくれる。天候は基本的に快晴。暑さを感じるほどでもなく、吹く風はどこまでも涼しい。妙に歩きたくなる毎日。僕は陰鬱とした気分で筋肉少女帯を聴いている。

 

「昔、ある歌手は遠くへ行きたいと

唄って 喝采を浴びたが

遠くへ逃げたいと 唄う 僕を

SISTER STRAWBERRYは

恥じているようだった」

(キノコパワー/筋肉少女帯

 

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コロナの時代の僕ら

 正確な時期は忘れてしまったが、去年の春頃に新しい大学図書館がキャンパス内に作られた。それまではキャンパスの各地に小さい図書室が点在していたのだが、それらを統合した二階建ての図書館が、広大な空き地にどっしりと建てられたのだった。うちの大学は山の上にあるため、図書館からの景色はとても良い。実験の合間に研究室を抜け出して、京都の街並みを眺めつつ、家から持ってきた文庫本を読むということをよくやっている。

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雪国

 2020という数字はキリがよくて、未来的だなと思っていたのだが、そこに1を足して2021となると、なんだか得体の知れないやつという感じがする。得体の知れない年になってもう一週間が過ぎたが、今のところ心身ともに安定していて、いい感じだなと思っている。まぁどうせすぐに崩れてしまうのだろうが、安定している今を喜ぶのは悪いことではない。

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闘争領域の拡大

 「小さい頃は神様がいて/不思議に夢をかなえてくれた」というのはユーミンの歌詞だが、僕にもかつて、神様と呼んで差し支えないような存在がいて、僕がすべきことをそっと教えてくれたものだった。なんでもないような瞬間に、人生の指針とも言える考えがパッと頭の中で発生する。根拠はどこにもなかったが、僕はそれを信じた。実際のところ、色々とそれでうまいこといった。神という概念があるのも不思議ではないと思う。

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