一一一一一

 困ったことに金が無い。日に日に削れていく貯金残高を見て、胃がキリキリと痛んでいく。平日は夕方まで研究室に籠っているので土日にバイトをいれるほかないのだが、サークルの大きなイベントとか遊びの用事が入るのも基本的に土日なので、ほぼ働けていない。四回生なのだからいい加減にサークルから手を引くべきだとか、平日の朝または夜に働けばいいだとか、叱責する声が頭の中で聞こえるが、それを無視してお金が無いとぼやいているのが僕だ。甘ったれた精神の僕だ。

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ひきこもらない

 何がそうさせているのかは分からないが、心に余裕がない。知り合いの、または街で見かけた赤の他人の、些細な言動・行動に苛立ちを覚える。体の内側を火であぶられたような苛立ちが、頭の中にある”考えるスペース"をキュッと狭めている。人に対して負の感情しか抱けなくなる瞬間がある。本当に性格が悪くなったと思う。

 

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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

 2020年に入ってからずっと体調が悪い。自分の体調を意識すればするほど悪化していくような気もする。病は気から、とは言うがその気を起こさせるのも病なので終わりが無い。今日は研究室に辿り着くなり、意識が飛びそうになるほどの腹痛に襲われてやむを得ず早退した。研究室に配属される前はあんなに気軽に授業をさぼっていたのに、今はなんだか早退するだけですごく後ろめたい。でも今日は仕方がない。そう言い聞かせながら読みかけの本を読んだ。

 

 そんないきさつでジョナサン・サフラン・フォアの『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を読み終えた。

 

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コンビニ人間

 芥川賞直木賞が発表された。今村夏子の『むらさきのスカートの女』が話題になっていたのはもう半年前のことなのかという驚きがある。芥川賞が発表されるたびに今回は新刊で買って読んでみようかな、と思うのだが毎回お金の無さを言い訳にしてパスしてしまう。そして気づいたら文庫化までしていて、ブックオフの100円棚に並んでいるのを見かけるようになる。その度になんだか不甲斐ない気持ちになってしまう。

 

 ようやく村田沙耶香の『コンビニ人間』を読んだ。七回前の芥川賞受賞作だ。

 

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百年の孤独

 2010年代最後の大みそかに僕は38度を超える熱を出し、駆け込んだ休日急患でインフルエンザと診断された。その後熱は39度を超え、意識は朦朧とし、気づいたら2020年に突入していて、そのまま三が日をすべて布団の中で消費した。ようやく落ち着きを取り戻したのは新年あけてから四日目のことで、そのころにはもう世間は新年ムードにも飽き、もうすぐ始まる仕事やら学校やらに意識が向かっていた。僕だけが2019年に取り残されたような、そんな宙に浮いたような感覚があった。

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うたかたの日々

 物語の基本的な構造はグラフに表すことができる、と述べたのはSF作家のカートヴォネガットである。彼は縦軸を幸福度(上に行くほど幸福、下に行くほど不幸)とし、時間の流れを横軸に取り、物語の起伏をグラフに表そうと考えた。講演の際、彼は3つの形を例として描写しているが、2016年のデータマイニングを用いた研究で物語というのはおおよそ6つの形に大別されることが分かった、という報告などがある。このあたりの話は「ヴォネガット ストーリーシェイプ」などで検索すると出てくるので気になった人は検索していただきたい。

 

 今回の記事の題材である「うたかたの日々」は、ストーリシェイプの観点から述べると上昇から下降をみせるジェットコースターのような物語だ。

 

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